No.65 職業教育とキャリア教育

①職業教育重視の経緯
 職業教育はキャリア教育とも呼ばれ、現代社会における若年雇用問題、フリーターやニーとの増加など諸問題を背景にして重視されてきた。1999年の中教審答申で「望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身につけるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」として提案された。
 2003年6月、複数の省庁の連携によって、「若者自立・挑戦プラン」が出された。詳しく読む
さらに、2004年には文部科学省から「若者の自立・アクションプラン」が出され詳しく読む、ジョブカフェなどの設置が求められるようになった。
 現在進められている職業教育はこの流れを強く受けており、職場体験等の重視や、単位制高等学校にデュアルシステム(在学中に職場の研修を受ける)の試み、ニートの自立を促す「若者自立塾」などの設置が進んでいる。
 各学校の具体的な取り組みの実例はこちらから読む。

 

 

②カリキュラムの中の位置づけの問題
 中学校や高等学校を中心に、職業意識の形成を目指した職場体験が盛んに行われるようになったが、一方で多くの受験校ではこの職場体験の代わりに大学研究という形を取っているのが実状である。
 推薦入試などの面接資料には、大学研究を継続的に行っている進学校を目にする。
 それはそれでいいのだが、今度は大学で職業教育を精神面からやらなければならない実状が生まれている。そもそも、職業意識や勤労意識といったものは家庭教育で行われるべきものでもあるし、さらにいえば、もう少し早くからじっくりと培っていくものではないか。
 また見出しにも掲げているのだが、これまでの教科に分かれたカリキュラム編成において、こういった職業教育は、道徳や学級活動などで取り組むしかなく、専門的に教えられる教員も配置されていない。ましてや、継続的な指導が必要な学習にも関わらず、それ自体のカリキュラムも明確に示されていないのだ。本当に社会に出て必要な力は、いつもこうやってカリキュラムの外に位置づけられ、やがて忘れ去られていく危機にさらされている。

 

 

③各教科の学習内容の洗い直し
 しかし、PISA調査の結果などを見ていてもそうだが、実は各教科の学習内容をもう一度洗い直す時期にさしかかっているのではないか。
 各教科でアプリオリに盛り込まれている学習内容を、もう一度社会生活の中でどのように必要となるかという観点から洗い直し、それそのものを学習として位置づけていく場面が必要だろう。
 漢詩を読むという学習が、社会生活の中でどのように必要とされているのか、二次方程式は社会生活の中でどのように生かされているのかといったことを、教師個々人が改めて問い直し、学習者に説明できるようになりたい。