No.28 子どもの発見

 ルソーの『エミール』で示された「子ども観」は、教師として仕事をする上で忘れてはならない子供観である。
 子どもは大人によって育てられる存在であると共に、自らが伸びていこうとする主体的存在である。
 こんな当たり前のことも、日々の授業の中で見失われてしまう。私は教育学部以外の学部を出て現場で教師をしている先生にはなるべく古典的な教育書を読んでもらうようにしている。
 そこには、「子どもを育てる」ことがどういうことなのかということが書かれているからだ。
 教師は教える存在、導く存在であるとともに、学ぶ存在、子どもたちに教えられる存在でなければならない。こういう理念はことばではいくつも積み重ねることができるのであるが、実際にそれを実行しようとすると、まず子ども自身の見方を変えなければならない。
 子どもから学ぶことができるか、それは、学ぼうとして子どもを見つめることができるかどうかである。そのこころがなければ、子どもは育たないし、教師も育たない。実に難しいことではあるが、社会を新しい方向に導いていくのは、教師自身ではなく教師の目の前にいる子どもたちなのだという考え方に立つべきであろう。

 子どもの主体性を尊重するということは、こういう子供観に立つ教師が行い得るものなのだと思う