No.36 自己中心性

 ピアジェの発達論の中でも、言語発達の問題と深く関係しているのは実は自己中心的思考から脱中心化への流れではないかと思っている。
 幼稚園児を見ていると、空間や時間の概念を十分に獲得できていないために、自他の区別があんまりできない。
 だから「ごっこ遊び」ができる。今更仮面ライダーになりきってみるなんていわれても困るのはそこまでのめり込めないからだが、それはすでに仮面ライダーではない自己が完成しているからだし、恥ずかしいと思うのは、仮面ライダーをしている私を他の誰かがどう見ているかが分かってしまう他者からの見えを認識できるようになっているからだ。
 彼のいう前操作期は2才から7.8才だが、もう少し早くから脱中心化は進められているように思う。
 いずれにせよ、毎日行われることの中から法則性を発見できるようになるのは、時間や空間を超えて共通する出来事を結びつけることができるようになるからで、これを保存概念というが、保存概念が頭の中でできるようになってくるといろんな意味で賢くなれる。
 操作期の入り口を小学校入学時7,8才に置くと、なるほど小学校からの学習内容はこの保存概念を形成できることを前提条件として措定されているように思う。
 
 ことばとはいうまでもなく事象の概念化である。目の前にいる犬は自分の犬で名前はゴン、ゴンは日常生活ではゴンでいいわけで、犬などという概念に置き換える必要はない。
 しかし友だちも犬を飼っていて、サブという名前だという。サブも犬だしゴンも犬で、同じように犬を飼っているんだという風に理解できるためには言語化する認識が必要である。
 隣の子は、五郎という亀を飼っているなら、ゴンとサブと五郎はどういう風に理解されるのか。考えてみながらピアジェの各段階の理解を進めると分かりやすくなってくるだろう。
 脱中心化した思考を持つということは、時間や空間を超えて物事を認識する事が出来るようになることと共に、分類したり関係を捉えたりすることができるようになることを意味している。
 こういった作業は全て言語化というプロセスを経るため、ことばの力の発達にも深く関係しているというわけ。
 頭の中が先に発達するのかことばが先に発達するのかという問題は愚問だが両方が連動して関係ししながら発達していくものだと考えている。

 

 

 

 

ピアジェ理論からみた思考の発達と心の教育

ピアジェ理論からみた思考の発達と心の教育

  • 作者:滝沢武久
  • 幼年教育出版(発行 社団法人日本幼年教育会)
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