No.54 生活指導と生徒指導

①歴史的経緯
 生活指導とは、『授業研究 重要用語300の基礎知識』によると、1920年代の民間教育運動のなかで生み出されて発展してきたものであるといわれている。
 大正期に起こった生活綴方運動や生活教育運動のように、学習者自身が学習の中で生活を対象化しよりよい生活の構築に向けて学習を進めていくという理念はよく知られている。
 戦後、「ガイダンス」の訳語として導入された「生活指導」もやや意味が広すぎたために、1958年頃から文部省を中心に「生徒指導」という言葉を用い始めた。
 生徒指導とは、児童生徒を内在的価値を持ったものとして捉え、彼らの社会的な自己実現、自己指導能力の育成を指導支援してくことである。

 

 

②生活の改善の重要性
 学級担任などをしていると、学校での不真面目な行為をいくら取り締まっても限界があることを感じる。喫煙などは、家庭での指導と連携しなければなかなか収まるものではない。
 同様に、学習者ではなく家庭に問題がある場合にも学校での指導の限界を感じることがある。夜遊びや不純異性交遊など半ば保護者黙認の中で行われている場合も少なくないので、どうしても生徒指導より生活指導を必要とする場合が多い。
 しかしながら保護者の指導や家庭生活の改善には教師の手が及ばないことが多く、結局学校だけでの指導にとどまってしまうというディレンマがある。
 こういう場合、長期的な展望に立って、保護者を巻き込みながら学習者の指導に当たるしかないので、日々の家庭訪問や保護者会などを充実させたり、学校通信などの文書を出したりする取り組みが進められる。

 

 

③学校と生活と
 学校で何のために勉強しているかというと、何より生活の質的向上のためであるということが考えられる。学校で学ぶことが生活の中に活かされなければいったい何のために学んでいるのか分からない。これは異論もあろうが、結局将来の生活のためという目的も含めば、常に教師が学習内容が学習者の生活といかに結びつくのかということを考える必要はある。
 学校は学校、家庭は家庭という分断した状況ではいくら学習を進めても意味のないことではないだろうか。
 そこで個々の教科の学習においても、生活との結びつきを考える学習に加え、現在の自分の生活自体を見つめる学習、できれば生活の中から学ぶ必然性を発見できる学習を構想していく必要がある。