No.25 授業のプロジェクト化

プロジェクトメソッドとは、キルパトリックが開発した学習形態である。基本的には経験主義教育を理論的背景に置いている問題解決学習である。
 具体的には作業を通して、学習者自身が問題解決過程をたどり、その中に学びが生成するというものである。 ゆえに、問題解決学習と同様の批判点、学習内容の体系化、系統化に欠くという点が上げられ、衰退していった学習法である。
 しかしながら、よく考えてみると、この学習形態も、現在の総合学習には生かされている。

 これはいったいどういうことなのだろうか?

 そもそも総合学習が重視され始めた背景には、学校教育が学習者の生活とかけ離れたところで行われているが故に、実際に生活に役立つ力が身につかないのか、実際に役立つように身につかないのかは別の問題としても、どうも学校で学んでいることは生活には役立たないという感覚が強くなったことに起因する。

 それならば、学習内容と生活とを結びつけた学習を構想する必要があるということで、形式的に学んだことがどのように実生活に役に立つのかということを学習するよりも、実際の生活の場を学習に引き込んで学習を構想する方が手っ取り早いということで、学習の実生活かが進んだ。これがまさに、プロジェクトメソッドの発想に近いものであったのである。

 プロジェクトメソッドの特徴は、なんといっても実際の社会生活との結びつきが強い学習場面を構想することにある。例えば、町の通りにごみが増えている。どうすればごみを減らすことができるのか、という問題を学習者自身が強く実感するために、町に観察に行く。
 ただ観察させてもいろんな問題を発見してくるだろうから、ある程度導いておかなければならないんだけど・・・。それを解決するためにいろんなものを調べたり学んだりする中で、実際にごみ問題が解決されれば、あとは反省的思考を促してごみ問題だけではないあらゆる問題の解決のために転移可能な学習内容を顕在化することで終わり。

 これじゃあどう考えても体系性や系統性は確保できないだろうなあと思うんだけど、総合学習ってそういう行き当たりばったり的な感じが強いのは元々であるから仕方がないとしても、入試による知識偏重主義の傾斜を何とかしてほどきたい一心の現れだと考えるとうなずけるところもある。学問的探求を対象としたプロジェクト化が進めばもっとおもしろくなってくるのになあ。