No.32 公共性の育成  公教育

 2002年の中央教育審議会答申において、「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」という文書が出された。これは、大学入試におけるボランティア活動の評価、「ヤングボランティア・パスポート」などの形で具体的に提案されている。

 なぜ、現在このような教育の方向性が示されるのか?

 単純に考えると、社会秩序が不景気に連動する形で乱れてきていて、特に若者の犯罪やモラルの低下が目に見えて社会問題化してきているからだと答える人が多いだろう。

 しかし重要なのはこういった教育政策が具体的に提案されてくる経緯は二側面ある。一つは今いったような状況に対する抑止の目的、もう一つはもっと前向きに新しい社会の創造に向けてである。

 教師として子どもたちに向き合うときに何らかのルール、そしてルールを守ることを教えなければならない。しかし、その際にどうしても前者の抑止的な提示の仕方をしてしまうために子どもたちに定着しない。

 禁止事項ばかりを身につけさせることは子ども自身にとっても良くないし、なにより見つからなければ構わないという変な会費の仕方で自己の欲望を満たそうとする傾向が育ってしまいがちだ。

 ボランティア活動の推進には、前向きな目的として「公共性の育成」がある。公共性ということばは、道徳性やモラルとは少し違い、社会体制を維持するためのルールというニュアンスが薄い。むしろ、個人が社会に積極的に参加していく際の参加の方法という意味合いが強い。
 
 利潤を追求しない活動が社会の中で認められてきている。新潟地震などの時も多くの人がボランティア活動におもむく。いくらで雇われてではなく、社会参加の一つの形としてこういったボランティア活動が一般化されてきている。NPOの活動などもそういった社会参加の一環である。
 こうした利潤を追求しない社会参加によって、個人が自己の存在感や有用感を感じる機会が得られるのであれば、その時「公共性」が育まれていくのではないだろうか。理念ではなく、実際の参加を通してしか身につかない事であるが故にこういった方向性が示されているのである。