No.60 地域単元

①地域単元とは何か
 教科書の編集に関わっていると、教科書でしかできないことと教科書ではできないことがはっきりしてきます。教科書ではできないことの一つに地域に関する学習を提案することがあります。
 国語などでは、地域の独自性を持たせた学習としてせいぜい、自分たちの暮らす地域の方言学習位しか教科書に載せられません。しかし考えてみれば、自分の暮らす地域のことをよく知らずに、日本のことや世界のことを理解しようとすること自体が本末転倒なのではないでしょうか。教員採用試験などでその地方の出身者が優遇される傾向にあるのはこういった学習を教科書なしで構想できる人が欲しいからです。だから他県を受けるときには、その県のことを地域単元を構想するつもりでよく勉強しておく必要があります。

 

 

②社会や文化から生活へ
 学校の学習と生活を結ぶことの重要性はこれまでも述べてきましたが、構想している学習そのものの中に学習者の生活が含まれるような学習も重要な学習の一つです。自分たちの暮らす地域ではどのような産業があり、どのような文化があり、どのような歴史があるのかということは実は教科書には書かれていないことが多いのです。しかしこういった学習を深めていくことで、最終的には様々な人々と出会い、様々な人々の生活を知り、そういった人々とどのような結びつきを持って暮らしていけばよいのかということを考える機会が生まれてきます。
 こういったことの積み重ねが郷土を大切にする心をはぐくみ、自分たちの暮らす地域の公共圏を大切にする心を育てるのだと考えます。

 

 

③学校間交流などを仕掛ける
 調べ学習やインタビューなどを経て自分の暮らす地域への理解が深まるだけでは地域単元の学習は完成しない。更に他の地域への関心を深め他の地域に関する理解を深め、自分の暮らす地域との関わりを考えていくことでこの学習は完成する。そう考えるとなかなか他の地域のことを知ろうとするきっかけがなくついつい自分の暮らす地域の学習で終わってしまうのが実情である。そこで、他の地域にも興味を持ち、その地域のことを深く知ろうとする意識を生み出すためには、web上などで他の地域の学校と交流を持ち、互いに自分の暮らす地域のことを紹介しあうような関わりが持てればよい。