No.23 系統学習

系統学習が日本に導入された経緯は古い。明治20年から30年頃、ドイツのヘルバルト主義の教育理論が導入されたところにさかのぼる。ヘルバルトといえば、五段階教授法で知られているが、我が国で進められた実践は、既存の学問体系の効果的な注入であった。
 戦後、こうした学習のあり方を反省し、先の項で触れた問題解決学習が重視されたが、これは振り子を反対に振りきった感が強く、結局、学習内容の体系性や系統性がカリキュラムに反映しにくいため、学力低下という批判のもとに下火を迎える。

 重要なのは、学習者の主体性をどこまで引き出せるかということと、学習内容の系統性をどこまで明確に確保できるかという点にある。一見相反する動きのように見える両者も、改善策として学習者観察に目を向けて行かざるを得ない点では共通性をもっている。

 系統学習に欠けている、学習内容の要素化や学習者の主体性の無視は、現在の動機づけやレディネスの研究によって補われつつあるし、問題解決学習に欠けている学習内容の体系性や系統性の問題は、教育内容の分類や発達研究などの研究によって補われつつあると

 

 

見て良いのではないか。

 こう考えると、学習形態に関しては、唯一絶対的に効果がある方法があるといえるものではないし、学習者の状況に応じて判断してくだけのものでもない。
 様々な学習形態が、学習者の状況、学習内容の特徴、学齢などに応じて多様に組み合わされていくことが重要なのである。そしてこの仕事は学習者に直接向き合っている教師自身の観察眼と計画性にかかっていると言わざるを得ない。
 教育現場に出てから学ぶことの方が多いのかもしれないが、教育理論をもたない実践家が、勝手な思いこみで実践を重ねるとき、かならずこの学習形態が単一化し、学習効果が停滞する傾向が非常に強いことはいうまでもない。
 難しいことばで語る必要はないにせよ、自らの実践を反省的に位置づけ捉え直すことによって、新たな実践が生み出されるということを忘れてはならない。