No.45 TT

①成立の背景
 1955年に、ハーバード大学のケッペルによって考案された教授法。協力教授組織と翻訳される。この教授法はもともと、教室での一斉学習において、教師主導型の授業が主流をなしていた時代に、(現在もそういう授業をする教師はいるがだいぶん少なくなってきているように思う)教室における教師の権力性や権威性が一点に集中することによる学習者の主体的学習を阻害している状況を改善するために開発された教授方法である。
 複数の教師がそれぞれの専門性を発揮して協同で授業することが特徴で、その結果、一人の教師に集中していた権力性や権威性が分散すると考えられた。

 

 

②TTの効果
 複数の教師が協同して授業を行うことで教室における権力性や権威性が分散される以上に、この教授方法の利点は学習計画の段階から、複数の教師が携われることにあると言って良い。一人の教師が、自らの知識と経験の範囲で構想する学習は潜在的にも顕在的にも固定化されやすく、ワンパターンに陥りやすい。それを肯定的に捉える教師もいるが、一方で学習の固定化が進み、授業をすればするほど学習者はその教師の固定化された学習に慣れていき、学習の緊張感は薄れていく。効率の良い授業の受け方を学習者が選び取るときすでにその学習の効果は半減していると言って良い。
 このような状況を自然と回避することができるのは、複数の教師が学習計画にたずさわり、それぞれの授業スタイルや潜在的に固定化している学習パターンを相対化することができるからだ。
 これは、教師自身の授業計画力の向上にも結びつく。
 さらに、実際の授業においても、発問や展開をはじめ、学習者との具体的な対話なども教師によって異なっているが、そういった点での相対化も進むため、教師自身の授業実践力の向上にも結びつく。
 また学習者の側の利点として、なにより教師一人に対して担当する学習者の数が減少するため、授業のなかでより個人的な関わりが生み出されやすくなる。また、一つの学習内容を異なる視点から説明されたり、解説されたりする機会が生み出されることで理解が多角化したり深くなったりすることも考えられる。

 

③TTの問題点
 実際の授業をしてみると分かることだが、学習者の意識やまなざしを集中することが難しい事が第一に挙げられる。複数の教師が上手くコラボレートした授業計画を相当念入りに立てておかないと、学習の方向性も分散しやすく、学習者の掌握にも困難がでる場合がある。
 また学習マナーや教室のルールづくりなどの面ではつねに複数の教師が教室にいる状況だと難しい。
 これは、小学校などでよく見かけるのだが、一人の教師が全体に話しかけていても、何人かの学習者はもう一人の先生に意識を向けていたり話しかけていたりする。これは先程から述べてきている問題点を具体化した現象だ。つまり、一斉学習と班学習など分散型の学習との連続性が確保しにくく、もう一人の先生の位置づけをよほど考慮しておかないとよく起こることである。

 

④それでもTT
 しかしながら③で挙げた問題点は、計画の段階である程度解決できる問題でもあるし、また当事者である教師同士の打ち合わせが十分なされていればこういった現象は起こらなくなる可能性が高い。
 それ以上に、例えば異なる教科の教師や専科の異なる教師がコラボレートすることで学習が多角的に増幅される効果や、教師の力量形成に非常に役立つ点などを優先すべきだと考える。また、同じ学年を担当する教師でTTを行ったりすることで、学習者を観察する目を養うことも可能だ。また、つねに一つのクラスで授業することを考えるのではなく、二クラスや三クラス同時に授業することなど日常の授業とは違う学習環境を創造することもできる。